中性化とはなにかコンクリートの中性化とは、アルカリ性のコンクリートがPH(水素イオン濃度)9以下に下がってしまった状態をいう。
 
中性化が起こる原理健全なコンクリートはセメントから遊離された「消石灰」(消石灰と言う名称は通称で、正式には水酸化カルシウム(Ca(OH)2である)を多量に含むため、一般にPHは12〜13という強アルカリ性である。
 
アルカリ性であるということは、OH-(水酸化物イオン、アルカリ性を示す物質)量が、H+(水素イオン、酸性を示す物質)量に比べて多量に存在しているという状態である。
 
中性化とは、アルカリ分が何らかの理由によって消失(減少)し、水素イオン量が増えていく現象のことを指し、中性とはPHが9程度まで下がった状態をいう。
 
コンクリート構造物は中性化しているうちは強度を保っているが、これを通り越して酸性になると強度を失い崩壊してしまう。なお、中性化によってコンクリートが強度を失い、崩壊する事はありえない。(コンクリートが中性化した結果、何らかの不都合が生じる事はありえる。)
 
何故中性化が良くないのか(何故アルカリ性に回復する必要があるのか) コンクリートが中性化しても強度を失うことがないのは前に述べた通りであるが、中性化が良くない理由は、中性化することによってOH-が減少してしまうためである。
 
鉄筋は、健全な(中性化していない)コンクリート中ではOH-が多量に存在しているために錆が発生する事はない。しかしながら、OH-が減少するとCl-(塩素イオン)が不動態被膜(新しい鉄筋の表面についている青黒い被膜)を破壊し、鉄筋の錆が発生する。
 
なお現場によっては、既に赤く錆びた鉄筋を使用してコンクリートを打設している。鉄筋が赤く錆びていると言う事は、その部分の不動態被膜は既に失われていることになるが、コンクリートの強アルカリにより失われた不動態被膜が再生されるために問題は発生しない。
 
また、中性化しても問題にならないケースがある。これは鉄筋の入っていない無筋コンクリートの場合である。
 
コンクリートが中性化する要因コンクリートが中性化する主たる原因は、大気中に存在する炭酸ガスによるものである。
 
炭酸ガスはコンクリート中の余剰水の中に溶け込み、炭酸(H2CO3)となる。これがH+の供給源となり、中性化が進行する(H+とOH-が結合(中和)される事により水(H2O)を生成する)。この他にも外部から供給される酸性物質、例えば酸性雨(NOx、SOxの水和物)などによっても中性化は促進される。
 
これらのことをまとめると以下のようになる。
 
  Ca(OH)2 ⇔ Ca2++2OH-
   健全なコンクリートは多量のOH-によってアルカリ性を示す。
 
  CO2+H2O ⇔ H2CO3 ⇔ H++HCO3- ⇔ 2H++CO32-
   大気中の二酸化炭素がコンクリート中の余剰水の中に溶けて(加水)分解し、H+を供給する。
 
  OH-+H+ ⇔ H2O
   OH-とH+が(中和)反応して水を形成する。これによりOH-が減少し、コンクリートは中性化する。
   (アルカリ性でなくなる)