化学的劣化とは何かコンクリートのセメント分が化学反応を起こして劣化する現象をいう。一般には特殊条件に置かれているコンクリートに起こる。
 
酸による劣化コンクリートは前述したように強アルカリを示す物質である。コンクリート表面と酸性物質が接触した場合、その部分で中和反応が起こる。
 
中性化の場合には炭酸のような非常に弱い酸性物質である(遊離消石灰を中和する機能はあるが、セメント硬化体を破壊する機能まではない)ため、コンクリートを表面から徐々に中性化し内部に向かって中和反応が進んでいく。
また強酸と接触した場合には遊離消石灰を中和するだけにとどまらず、セメント硬化体自身を中和して破壊してしまう。
これが酸による劣化で、表面からやせ細っていくのが特徴である。
 
温泉地帯や食品工場(酸を使わない食品工場でも、食品の腐敗の過程で生成する乳酸により劣化する)にみられる現象である。
 
動植物油による劣化この劣化には大きく分けて2種類の劣化がある。ひとつは動植物油から遊離される酸によるものであるが、この劣化過程は上記したものと同様である。
 
もう一方は、コンクリート中の遊離消石灰と反応して、膨張、破壊するものである。この劣化の特徴は劣化の初期には何も外観上の変化はおきないが、内部で膨張、コンクリートを破壊する事にある。
 
ただし、食品工場のように毎日洗浄が行なわれるようなところでは、内部に油脂が到達する前に表面が削り取られてしまうために、酸と同じような劣化状況を呈することがある。
 
SO42-(硫酸イオン)による劣化コンクリートの硬化体中には、3CaO・Al2O3(アルミン酸3カルシウム、通称C3A)が存在するが、ここにSO42-(硫酸イオン)が供給されると、3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O(通称エトリンガイド)を生成する。
 
このエトリンガイドの膨張によりコンクリート内部から破壊されるのが、SO42-(硫酸イオン)による劣化である。
 
温泉地帯や下水道の管渠などに見受けられる。なお、下水道の管渠などは、酸とSO42-の複合した劣化現象が多々見受けられる。